消 沈(前編)<農業で夢を見るなら>
「自然と共に生きるって」
建設会社を6月に退社し、7月末に、食品加工会社に就職しました。
地元で収穫した野菜をカットして提携先に出荷したり、持ち込まれた食材を依頼に応じてドレッシングやジャムにする仕事を主な生業としている小規模の会社です。
農産物の加工に興味があったことと、メーカーで働いてみたいという気持ちが以前からあったため、面接を受けたら、その場で採用となりました。
あっさりと入社が決まり面喰いましたが、後になって取引先からですら「ご愁傷様。大変なところに就職したね」と陰口を叩かれる会社でした。
しかし入社当時はそんなことはわからず、地域の農家の方々とつながってアクティブかつクリエイティブに活躍する自分を夢想していました。
自身の偏ったイメージとして、「農家の方たちは朴訥で温厚な感じ」と勝手に思っていたのですが、実際お付き合いしてみると、その地域独特の土地柄のせいか、個性的な方が多かった印象です。
農作物は収穫期は収入が得られますが、収穫期を過ぎると収入が途切れます。
また一方では、野菜や果物は収穫期に豊作で獲れすぎてしまっても、保存や需要には限界があるため、場合によっては廃棄になることもあります。
よって、それを解消するために、収穫時期にたくさんとれた農産物を保存しやすく加工して、作物を無駄にすることなく、年間を通して収入源となるアクションを起すことが農業での生き残りの方法の一つになっています。
具体的には、果物をミキサーにかけて果汁にして、凍結させてアイスやジュースの原料にしたり、野菜を刻んでドレッシングにして土産物屋で販売します。
これを6次産業と言います。
6次産業とは、1次産業である農業、製造・加工業である2次産業、販売・流通の3次産業を掛け算(「1次産業の1」×「2次産業の2」×「3次産業の3」=6)した造語です。
自然を相手にするため、農家の方々はもちろんのこと、加工の現場も、牧歌的とは程遠く、むしろ過酷です。
農産品加工の現場は、不作のシーズンは加工の原料が足りず納期に間に合わない恐怖があり、豊作のシーズンは連日恐ろしいほどの量の作物を延々と加工し続ける地獄。
私が勤務した1年間は「調度いい」シーズンがなく、1年を通して豊作と不作どちらかの恐怖と地獄の時期をほぼ交互に体験しました。
<農作物をあてにした第6次産業で田舎暮らしを考えるならば>
【農業を愛せる人ならば豊作も不作も前向きに楽しめる】
【地域の農家に顔が利く人であればリスクが小さくなる】
【農業が盛んな地域といっても、不作がないわけではない】
【豊作のシーズンは加工も地獄。加工品の保存場所探しも地獄】